053:壊れた時計



 そこには
 壊れた時計しかなかった。


 電池を入れ替えても
 何度買い換えても
 ほんの数日で止まってしまった。

  
 「誰も居ないのに、勿体ないじゃないか。」

 そう言いたくって、館の主が
 こっそり止めて回ってたのかな。



 もう長いこと
 主の居ない館だったけれど。 



 そこはずっと昔、
 祖父の館だったんだ。